デジタル庁が「ガバメントAI」構築へ - 2026年度から全国自治体で生成AI活用が本格化

日本の行政が、ついにAIネイティブな組織へと進化を始める。

2025年6月13日、デジタル庁が閣議決定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」で、政府共通のAI基盤「ガバメントAI」（仮称）の開発が正式に発表された。これは単なるツール導入ではなく、行政サービスそのものを根本から変革する野心的なプロジェクトだ。

縦割りから横断型へ - AI活用の新たなアーキテクチャ

これまで各省庁が個別に進めてきた生成AI導入。その結果、重複投資やノウハウの分散という非効率が生じていた。ガバメントAIは、この状況を一変させる可能性を秘めている。

具体的には、複数のLLM（大規模言語モデル）を選択可能な環境を構築し、業務特性に応じて最適なモデルを使い分けることが可能になる。現在はデジタル庁内で海外製LLMを使用しているが、今後は国産LLMの開発動向も踏まえた多様な選択肢を提供する方針だ。

特筆すべきは、ベンダーロックインを回避しながら、セキュリティと柔軟性を両立させるアプローチ。これにより、特定のAIサービスへの依存リスクを避けつつ、常に最新・最適な技術を活用できる環境が整う。

デジタル庁は2023年12月から生成AIの技術検証を実施し、行政職員自身が業務改善に活用できるかを検証してきた。会議の要約、市民向けチャットボット、補助金の自動審査など、共通性が高く需要のある分野から順次開発を進める計画だ。

さらに注目すべきは、各府省庁に「AI統括責任者（CAIO）」を設置し、デジタル庁には官民の有識者による「先進的AI利活用アドバイザリーボード」を設けるという組織体制の整備。これにより、技術導入だけでなく、適切なガバナンスとリスク管理を実現しようとしている。

AI分野で先行する米国や中国に対し、日本は独自の価値観で差別化を図る。それが「安全性と共生」を重視したアプローチだ。

2025年5月に成立した「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」（AI新法）の具体的実装として、ガバメントAIは位置づけられている。機密情報の取り扱いや、AIの判断の透明性確保など、行政ならではの課題に真正面から取り組む。

2026年度の本格稼働に向けて、日本の行政サービスは大きな転換点を迎える。市民にとってより便利で、職員にとってより働きやすい行政の実現。その第一歩が、いま確実に踏み出されようとしている。

引用元URL: https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/10854/

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