2025年9月末から10月初旬にかけて、AI業界で大きな動きがありました。Microsoftが9月29日にAgent ModeとOffice Agentを、OpenAIが10月6日にAgentKitとAgent Builderを発表。両社が同時期にエージェント機能を強化したのは偶然ではなく、AIが「対話」から「実行」へとシフトする転換点を示しています。
まずOpenAIのAgent Builderから。これはビジュアルキャンバス上でドラッグ&ドロップ操作により、複数のタスクを自律的に実行するAIエージェントを構築できるツールです。従来は複雑なコーディングが必要だったワークフローを、数時間で作成可能。Gmail、Google Drive、Microsoft Teamsなどの主要ビジネスツールとの連携をMCP（Model Context Protocol）経由で実現し、例えば「受信メールを自動分類してGoogle Driveに保存し、担当者に通知」といった業務フローを視覚的に設計できます。Rampという企業は、Agent Builderを使って従来2四半期かかっていた調達エージェントの構築を2時間で完了させたと報告しています。
一方MicrosoftのAgent Modeは、Copilot内で動作するエージェント機能。ユーザーが指示を出すと、複数のアプリを横断して作業を遂行します。Office Agentはその具体例で、ExcelデータをもとにPowerPointプレゼンを作成し、Teamsで共有するまでを一連の流れで実行可能です。Microsoft 365エコシステムに深く統合されているため、既存の業務環境への導入ハードルが極めて低いのが特徴です。
両者の違いは明確です。OpenAIのAgent Builderは柔軟性とカスタマイズ性が強み。マルチステップの複雑なワークフローを構築でき、ガードレール機能により個人情報保護や不正動作の防止も組み込めます。対してMicrosoft Agent Modeは、Office製品間の連携に特化した即効性が魅力。「週次レポート作成」「会議準備」など、既存のOffice業務を自動化する用途に最適です。
実務での活用シーンを考えると、OpenAIのAgent Builderは開発リソースが限られた企業の業務自動化に適しています。カスタマーサポート部門なら「問い合わせ内容を分析してFAQドキュメントから回答候補を検索し、下書きを作成」といった定型業務を視覚的に設計できます。一方、Microsoft 365を全社導入している組織なら、Agent ModeでExcel分析からPowerPoint作成までをシームレスに自動化する方が効率的でしょう。
重要なのは、両者とも「完全自律」ではなく「人間との協働」を前提としている点です。承認フローや意思決定ポイントを組み込むことで、AIの効率性と人間の判断力を組み合わせた実用的なシステムが構築できます。今後はエージェント同士が連携する「マルチエージェントシステム」も視野に入っており、2025年はまさにAgentic AI元年と言えるでしょう。
引用元URL:
- OpenAI AgentKit: https://openai.com/index/introducing-agentkit/
- OpenAI Agent Builder: https://openai.com/agent-platform/
- Microsoft Agent Mode: https://www.microsoft.com/en-us/microsoft-365/blog/
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